生産者紹介-南勢水産

生産者紹介-南勢水産

穏やかな入江迫間浦で育つ鯛、

    まだ夏の陽射しが残る9月、港に横付けされた養殖筏から次々と真鯛が水揚げされ、活魚トラックに積み込まれています。青い空と海と山を背景にキラキラと輝く鯛。リアス式海岸が続く南伊勢町の海では養殖業が盛んです。中でも「タイの里」として有名な迫間浦に舌古(ぜっこ)さん一家が営む南勢水産さんを訪ねました。

    「ここは内海で入江が深いので波風が少ないんです。水温も安定しているので鯛を育てやすいんですね」と話してくれたのは三男の勇樹さん(38歳)。 「迫間浦で真鯛養殖が始まったのは30〜40年ほど前から。その前は真珠養殖が多かったみたいですね。シマアジやハタマスをやってる人もいます。うちは真鯛をメインでやってます」

    南勢水産さんの自慢の鯛といえば「お炭付き鯛」。 餌に竹炭を混ぜて育てた鯛は、脂肪分が抑えられ臭みも少なく身質が良いと、市場をはじめ鳥羽・志摩の旅館で引っぱりだこ。今から15年ほど前に、勇樹さんの父•幸夫さんが生み出しました。

「お炭付き鯛」のひみつ

    「町内でニワトリを育てている南勢養鶏さんが鶏糞の匂いに苦心されとって、餌に竹炭を混ぜてみたら匂いが楽になったっていうのを聞いてね。竹炭を作っている人も同じ町内にいるんですよ。鯛にもよいのでは、ということで試してみたんです」と幸夫さん。日に焼けた肌に温和な笑顔が光ります。

    「養殖鯛特有の生臭みをなくしたかった。竹炭入りの餌を鯛が育つまで1年、2年と与え続けて。そうしたら臭みだけでなく脂もスッキリ、鮮度保持もよいものに育ったんですよ」 「お炭付き鯛」は2004年に商標登録され、ブランド鯛として一歩を踏み出します。

    竹炭入りの餌はみえぎょれんの餌工場にオリジナル配合で製造委託。ドライペレットタイプとモイストタイプがあり、それぞれ竹炭の粉末が0.1%配合されています。 「6mm、8mmなど鯛の成長に合わせたサイズを何通りも作ってます。小さい時には高カロリーのものを与えたりしながら1年から3年かけて育てます。全国にはいろいろな餌を与えるブランド鯛があるけども、稚魚からずっと一貫してオリジナルの餌で育てているところはめずらしいと思うよ」

    「鯛養殖で大事なことは、毎日魚の様子を見ること。今日は機嫌ええかな、どうかなって見るんさ。2年も3年も育てるんやもん、子どもみたいなもんさ」 そんな幸夫さんの背中を見て、息子さんが3人とも仕事を手伝うようになりました。
「野郎ばっかやよって、けんかばっかしとるよ」と言いながらも目尻が下がる幸夫さんです。


三兄弟が継なぐ鯛養殖の未来

    現在は長男の一樹さんが社長業を継ぎ営業と運送を、次男の大樹さんが事務、三男の勇樹さんが生産管理を担当しています。

    「600gから2kgまで、いろんな大きさの鯛をいつでも切らさず出荷できるようにしています。一番よくでるのは1.5kgサイズですね」と勇樹さん。
「毎年10万匹の稚魚を仕入れています。最初は10cmくらいの大きさなんですよ。それをひとつの筏(網)に2万匹入れます。半年たったら半分の1万匹に、2年半経つ頃には5千匹に、と成長に合わせてだんだんと分けていくんですね」 南勢水産さんが所有する筏は全部で28台。みんなで手分けして育てているそうです。
「年間を通して出荷しているので、いつどのサイズをどう大きくしていくかの生産コントロールが重要。早く育てたり逆に遅く育てたりしながら、なんとかうまくまわしています」と笑います。

    高校卒業後、一度は音楽の道を目指して上京した勇樹さん。
「夢を追いかけて外に出たけど、なんとなく自分の限界がわかってきて。仕事を一緒にやらせてほしいと迫間浦に戻ってきました。よく東京にだしてくれたと思います。その頃はまだ会社はここまで大きくなくて、父や兄たちがこの地でしっかりと根をはってやってくれていたおかげで、自分は好きなことをできたんやなと、今改めて思います」
帰ってきてから15年。こんなにやりがいのある仕事はないんじゃないか、と語る勇樹さん。
「僕の子どもがこれまた三兄弟なんです(笑)。長男はじいちゃん(幸夫さん)のエサやり仕事について行くのが大好きで、将来は魚博士になりたいと言ってます。
仕事が早く終わった日は、風呂好きの子どもたちと一緒に、近所の高台にある民宿にみんなでお風呂に入りにいくんですよ。そこから見える夕暮れの景色が最高で。幸せを感じるひとときです」

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